異世界からの誘拐犯は裁けない

第一話 異世界の王国


 明日花が目を覚ましたのは、とても広い部屋だった。柔らかな感触は、彼が座っている椅子のもの。豪華な装飾の施された椅子の前には、段数の少ない階段に、赤い絨毯が敷かれている。

「お目覚めですか、王」

 そしてその部屋には、お揃いのメイド服を来た女性が三人。階段の下、明日花の正面に立っていた。一人は意識を失う前に出会った、メイドのリーダー、リルカ・フィーリー。

「ああ、ここは、どこだ?」

「王城です。その前に、自己紹介をしませんか? 貴方も突然、王と呼ばれては困るでしょう?」

「そう、だな?」

 何だか納得がいかないものを感じながらも、意識がまだぼんやりとしていた彼は素直に従う。最初に自己紹介を始めたのは、フィーリーの後ろに控える二人のメイドだった。

「ハルナート・ココットと申します。内政を担当しております。以後、お見知りおきを」

「ココット、でいいんだよな?」

「お好きなように。貴方は王ですから、変な呼び方以外は許します」

 最初に挨拶をしたのは、明日花より少し背の低いメイドだった。その差は五センチしかないのだが、王座のある場所が高いので彼にはもっと低く感じられた。

「サマリエル・メイシアです。気軽にメイシア、と呼んでくださいね、王」

「ああ、メイシア、だな」

「はい。一応、外政を担当しています」

 スカートの裾を持ち上げて、恭しく礼をしたのはもう一人のメイド。ココットよりさらに五センチ低いが、別の部分では大きく勝る少女だった。

 二人のメイドはともに金髪のセミロングで、瞳は紫色だった。しかしよく見ると同じ紫色ではなく、理知的な印象を感じたココットは青に近い紫、おっとりした印象を感じたメイシアは赤に近い紫だった。

 顔は全く似ておらず、双子や姉妹というわけではなさそうだ。他に特徴的な違いといえば、やはり胸の膨らみだろう。平均的な膨らみのフィーリーと比べると、後ろの二人のメイドは別の意味で胸が目立つ。とても薄く膨らんでいるのかもわからないココットと、はっきり膨らみが強調されるメイシア。瞳の色より覚えやすい特徴だ。

「ちなみに、私から情報を伝えておきますと、小さい方からAAA、B、Dとなっております」

「勝手に伝えないでください、フィーリー」

「ふふ、まあ、私はいいですよー。なんなら触ってみます?」

 呆れながらも冷静なココットに、悪戯っぽい笑みを浮かべるメイシア。フィーリーはリーダーと名乗っていたが、どうやら彼女たちは対等な関係のようだ。

「と、王の視線や考えはお見通しですが、名前は見通せません。自己紹介、お願いできますか?」

「あ、ああ、戸辺明日花だ」

 視線に気付かれていたことを気恥ずかしく思いながら、明日花は慌てて名乗る。

「覚えました、アスカ王」

「アスカ、と」

「よろしくねー、アスカ王」

「ええと、その前に、話を整理したいんだが」

「ええ。どうぞ」

 さすがにもう意識ははっきりしている。明日花は真面目な顔で、メイドリーダーのフィーリーに問う。

「ここは、どこだ?」

「貴方の世界とは異なる世界。異世界トゥーグリッサの百合の国、その王城です」

「で、なんで俺はここにいるんだ?」

「この国の王とすべく、お連れして差し上げました」

 どう考えても無理やり誘拐されたようにしか思えないのだが、一旦それは置いといて明日花は質問を続けることにした。罪を問うのは情報を整理してからでも遅くない。

「俺を選んだのは?」

「我が国には、王は異世界より連れてくる男性でなければならない、という伝統があるのです。その伝統に従い、たまたま見つけた貴方を、ちょうどいいと思って誘拐しました」

「自白した!」

「なお、私の独断ではなく、国の方針であり、伝統です」

「ちょうどいいってのは、どういう意味だ? その、やっぱり、魔法の才能があるとか、そういう感じか?」

 ちょっとばかりの期待を込めて、明日花は尋ねる。誘拐というのは問題だが、そういう何かがあるというのなら、少しは喜べる。

「いえ、特には。眠っている間に体液を調べましたが、貴方の魔法の才能は普通です。まあ、王としては十分かと」

「体液……」

「そういうご奉仕は専門外ですので。唾液です」

 そろりと股間を確かめた明日花に、フィーリーは素早く答える。

「だったら、どういう意味なんだ?」

「そうですね、いくつかありますが……まずは、貴方の世界の日本という国の言語が、この世界の言語と非常に近く、意思疎通が楽なこと。次に、高等学校を卒業する直前の貴方であれば、就職の代わりになって拒否されにくいかと」

「俺、進学予定だったんだが。それに……」

「それに?」

「卒業式のあとには、もっと大事なことがある」

「ふむ……どうぞ」

 どうぞと言われてもすぐには口に出しにくいが、ここで口にしないと断る口実ができない。明日花は大きく息を吸ってから、三人のメイドによく聞こえるように言った。

「好きな人に告白するんだ。ずっと前から好きだった、女の子に。だから、その、王ってのは辞退したい」

「できませんが、できますよ」

「どういう意味だ?」

「貴方には選択肢が二つあります。王として我らが百合の国のために一生を尽くすか、それを拒否して命を失うか。どちらにします?」

「おい、ちょっと待て」

 聞き捨てならない言葉に、明日花は声を荒らげる。

「待ちますよ」

「誘拐して勝手に連れてきた上に、脅迫って、いくらなんでも――」

「まあ、怒りますよね。でもこれが現実です。受け入れてください」

「受け入れろって、犯罪だぞ! そんなの受け入れられるわけないだろ!」

「犯罪? お聞きしますが、貴方の国には、異世界の者を裁く法はありますか? 異なる世界へ誘拐した犯人を裁く法はありますか?」

「いや、それは……ないと思うけど!」

「でしょうね」

「でも誘拐は誘拐だ。行方不明になったら、警察は動く」

「それがどうかしましたか? 貴方の世界に異世界へ渡る技術がないことくらい、調べているのですよ。動いたとしても、助けは来ません」

「……それは、そうだけど」

「さて、どうします? 王となるか、ここで死ぬか。悪くない話だと思いますよ? この国、いえ、この世界は、貴方の国や世界よりもずっと平和です。貴方が王となれば、一生を約束されるのです。それも、元の世界では到達できる可能性の極めて低い、優雅で快適な一生を」

「いや、でも……」

 反論しようとして、言葉が出ない。王となることを断って、待っているのは何か。それを考えると、今の自分がとるべき選択肢は一つしかなかった。

「わかった。俺でいいなら、王になってやるよ。そこから脱走しても知らないけどな」

 とりあえずは、死なない選択をする。元の世界に戻る方法はそれから探せばいい。この世界に異世界へと渡る術があるのなら、探せばきっと見つかるはずだ。

「あ、ちなみに異世界へ向かう魔法は簡単なものではないので……無理ですよ?」

「だったら、別の手を探すまでだ」

 考えを読まれながらも、明日花は諦めなかった。予定通りの告白はできなくなっても、彼女への気持ちは変わらない。そのために、必ず元の世界に戻ってみせる。

「お好きなように。とりあえず、王として存在してもらえれば、私たちとしては文句はありません。ただ、ひとつだけ忠告をさせてもらいます」

「忠告?」

「この国は女の子ばかりです」

「へえ」

 好きな女の子がいるとはいえ、そんな国の王様というのは悪い気分ではない。

「しかし、国民は王のものではありませんので。国民に手を出したら貴方のフェントゥーグを切り落とします」

「フェントゥーグ?」

「そちらの世界での、だ、男性器のことです。羞恥プレイですか?」

 今この世界での呼び名は恥ずかしげもなく言ったよな。明日花はそう思ったが、言っても話が進まないと黙っておくことにした。

「じゃあ、フィーリーはずっと俺を監視してるのか?」

「いえ、そういうわけではありませんが……この国の女性なら、誰もが自衛のためにフェントゥーグを瞬時に処理する魔法は使えますので。もっとも、音もなく痛みもなく、気が付いたらなくなっていたという形で処理できるのは、私を含むごく僅かですが」

「そうか。気をつける」

 元々手を出すつもりはなかったが、誘拐した上に脅迫したこのメイドなら、何をするかわからない。勘違いされるような行動は避けておいた方がいいだろう。

「では、近日中に王の誕生祭を行います。その前に、国を案内しておきましょう。ココット、メイシア」

「お任せを。国民への周知も兼ねて、案内します」

「はーい。アスカ王、こっちですよ」

「ああ、わかった」

 二人のメイドに案内されるまま、明日花は歩き出す。帰還方法を探るには、この国のこと、この世界のことをよく知っておいた方が役に立つはずだ。

 王城の長い廊下を歩きながら、先を歩くメイドに明日花は尋ねる。

「王ってのは何をすればいいんだ?」

「特には何も。国を動かすのは今まで通り、私たちだけでやっていけます」

 答えたのはココットだった。足を緩めて明日花の隣に並ぶ。メイシアは鼻歌を歌いながら、二人の半歩先を歩いて案内を続けていた。

「必要なのか、俺?」

「伝統ですから。古くからある、どうでもいい伝統ですけど」

「どうでもいい伝統で、俺はあんな二択を迫られたのか」

「その通りです。仕方ないのです、この国は腐っていますから」

「……城下町に出て大丈夫なのか?」

 少し不安そうな顔を見せた明日花に、ココットは笑って言った。

「心配はないです。基本的に、国民は気楽な者ばかりですから。それに、腐っているのは百合の国の上層部――私たちです」

「だよねー。あ、でも、女の子としては腐ってないよ。私は十七歳の若き乙女!」

「メイシアだけじゃなくて、私もですけどね。ちなみにフィーリーは一つ年上です。アスカさんは?」

「ふーん。同い年か……あれ?」

「どうしたの、アスカ?」

「いや、なんか呼び方が」

「誕生祭を行うまで厳密には王ではないですから。とりあえずは私たちと同じ、ツチヒト族の旅人として扱います」

「ちなみにツチヒト族というのは、地上に住む人の総称だよ」

「ぎりぎりまで王をつけた方がいいですか?」

「いや、アスカでいいよ。まだ実感がないから」

「了解です。まあ、色々と思うところはあるでしょうけど……お願いしますね」

「お願いねー」

 明日花は小さく返事をする。この二人は友好的で話しやすいし、王としての暮らしは悪いものではなさそうだ。腐っているというのは気になるが、多忙な王だと帰還方法を探す時間もとれないから、好意的に受け止めておくことにした。

 大きな扉を開けて、城下町へ。眩しい光が明日花たちを迎える。ここまで広い王城を歩いても誰とも出会わなかった。ココットたちの話によると、王城のメイドはリーダーのフィーリー、それにココットとメイシアの三人だけという。他にも王城に住む者は一人いるそうだが、今は忙しいので紹介はまたの機会にするとのこと。

 百人以上も暮らせそうな王城に、暮らすのはたった四人。明日花を含めても五人。よくそれで国が動くものだと思うが、その理由は城下町に出てすぐにわかった。

 石造りの建物が並ぶ、活気のある城下町。王城は高い位置にあって、見渡すと円形に広がる町と、その周囲には広がる平原が目に入った。小さな国である。人口はわからないけれど、低い建物が並んでいることから、日本みたいに密集しているようには見えない。

 城下町を歩いて少し、出会った一人の少女が声をかけてきた。

「あ、ココット、久しぶりー。その人は?」

「アスカさんは旅人です。今のところは」

「今のところはって、あ、もしかして!」

「はい。適当に広めておいてください」

「おっけー! お祭りお祭りー」

 少女は大きく手を振ってから、どこかへと駆け出していった。

「メイシアちゃん、その子は?」

「旅人を装う、未来の王様です!」

「へえ。そうなんだ。お姉さんも、お祭りの準備しなきゃね!」

 店を案内されている間にはそんな会話が何度もあった。案内という形をとりつつも、二人のメイドがやっているのはお祭りの周知だった。そして町で見かける女性たち――小さな女の子からお姉さん、その誰もが明日花には特に興味を示していなかった。

 城下町を半分ほど歩いて、明日花たちは広場の噴水前で休憩していた。

「ココットに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

 ソフトクリーム片手に、休む未来の王と二人のメイド。こんなに気楽でいいのかと思わなくもないが、心地がいいのもまた事実。明るい太陽が照らすのは、ぽかぽか陽気の百合の国。優しい風が短い髪や頬を撫でて気持ちがいい。

「この国の気候は、いつもこんな感じなのか?」

「そうです。季節によって多少の差はありますが、暖かいか涼しいか、そんなところですよ」

「アスカ、気に入った?」

「一応な。ところで、異世界へ行く魔法ってどうやるんだ?」

 偶然を装って、というには無理やりな気もするが、明日花は質問する。彼にとってはここからが本題。フィーリーに聞いても答えは返って来ないだろうが、この二人なら答えてくれるかもしれない。

「どう、と言われましても、言葉で説明するのはちょっと大変です。実践するにも、アスカさん、基本的な魔法の使い方も知らないでしょう?」

「学べば俺でも使えるのか?」

「使えると思うよー。でも、何年かかるかなあ。私たちも使えないもん」

「ええ。フィーリーだけです。彼女に聞いてはいかがですか?」

「答えてもらえるのか?」

「使い方くらいなら。彼女はあれでも優しいんですよ」

「優しい、ねえ」

 誘拐した上に脅迫して、フェントゥーグを切り落とすなんて言ったあれが? 言葉にはしなかったが、彼の表情からそれは二人のメイドにも伝わっていた。

「そうなるよねー。フィーリー、誤解されやすいというか……」

「ああいうの、好きでやってますからね」

「あと、伝統には一番厳しい。面白そうだから止めなかった私たちも私たちだけど」

「厳しい?」

「そのうちわかりますよ。さて、そろそろ帰りましょうか?」

「ああ、うん」

 立ち上がったココットを追いかけて、明日花は歩き出した。微笑むメイシアに見つめられながら、王城への道を歩いていく。行きとは違う遠回りの道で、二人のメイドはお祭りの周知をがんばっていた。

「おかえりなさいませ、アスカ王」

 帰還した明日花たちを迎えたのは、もちろんメイドリーダーのフィーリーである。

「……ああ」

「ま、仕方ないですね」

「だねー」

 思わずぶっきらぼうに答えてしまった明日花に、ココットとメイシアが呟く。

「お話があるのですが、場所を移してよろしいですか?」

「いいけど、もう脅迫はしないよな?」

「王を辞めたいと仰らない限りは」

 にっこりとして言ったフィーリーに、明日花、そして二人のメイドが続く。彼女が連れてきたのは王城の一室、大きな机が中心にある広い部屋だった。

「誕生祭についてのお話をします。いつものように、基本的には城下の方々にお任せしますが、今回はいつものお祭りではありません。数百年ぶりの、王の誕生祭です。アスカには王としての決意表明をお願いしたいのですが、その前に質問がありそうですね?」

「俺を誘拐したのは、王が死んだからじゃないのか?」

「違います。この国が女性だけの国であることは既に理解していますね? それゆえに、王を擁しながらも、我が国の統治は昔からメイドが行っていました。そしていつしか、王がいなくても問題ないと考えるメイドが現れ、異世界へ行くのが面倒というメイドも多くいたことから、伝統は数百年もの間、守られなかったのです」

「別に守らなくてもいい伝統だと思うんだけどな」

「でも、私はそれが許せなかった。ですから、決めました。メイドリーダーとなったら必ず伝統を復活させてみせると。そしてアスカ。貴方を連れてきたのです」

「誘拐という形でな」

「いちいちうるさいですね。よいではないですか、女の子ばかりですよ。城下町に出てどうでした? 可愛い女の子がいっぱいいたでしょう。私たちだけでなく、多くの可愛い国民や美しい国民に王と慕われるのですよ。貴方くらいの年齢なら、喜ばないはずがありません。私もそれくらいは考えて選びました」

「伝統自体がおかしいとは思わなかったのかよ」

「思いましたよ」

「思ったのかよ!」

「でも、残念ながらどれほどの実権を握っていようと、私たちはただのメイド。伝統を変える力はないのです。それを変えられるのは王だけなのです」

「もしかして、俺を呼んだのはそれを期待して……」

「いえ、特にそういうわけでは。やっぱり伝統は守るべきではないかと。あと、王のフェントゥーグを一度切り落としてみたくて、つい」

「本当に腐ってやがる!」

 一瞬でも見直しかけた自分に後悔しながら、明日花はフィーリーの話に耳を傾けた。誕生祭でやるべきことを確認して、彼らの会話は終わる。王の決意表明といっても簡単なもので、王となると宣言するだけ。断る理由はなかった。

 そして日は流れ――三日後。

 本来は卒業式を終えて、意中の相手に告白するはずだった日。

「俺の名は戸辺明日花! 本日を以て、この百合の国の王になることを宣言する!」

 明日花は王城のバルコニーで、王としての決意表明をしていた。

 着ているのはちょっとした装飾の付いた、華麗な服。王としての正装であり、普段着であり、戦闘服でもある。動きやすさは抜群で、着心地もなかなかものもだ。

「王様ー!」

「アスカ王ー!」

 城下町から歓声が湧き上がる。王を歓迎するというよりは、祭りを楽しむためのテンションアップのようなものではあったが、歓迎ムードであることに変わりはない。

 城下町は綺麗に飾り付けされていて、お洒落な屋台もいくつか並んでいた。明日花はフィーリー、ココット、メイシアの三人と一緒に城下町に下りて、今は誕生祭を楽しむことにした。

「どうですか? 王と呼ばれる気分は?」

「悪くない。けど」

「わかっています。あ、そうそう、楽しむのはいいですが……国民に手を出したら、フェントゥーグを切り落としますので。期待しています」

「楽しませてもらうよ。期待には添えないと思うけどな」

 笑顔のメイドに、王となった明日花が笑顔を返す。

「お祭りだよー、ココット! とうっ!」

「ひゃうっ。メイシア、やめてください」

「えへへー、いつものことでしょ?」

 そんな二人の傍らで、メイシアがココットの後ろから抱きついていた。ココットの小さな胸を揉み、大きな胸を背中に押しつけるメイシア。

「でも、今は、アスカさんが」

「あ、そっか。これは面白いことになるかも!」

「アスカ王。国民にはもちろん、私たちも入っていますので」

「わかってるよ」

 少々の不安を感じながらも、明日花はこの雰囲気も悪くないと思っていた。とても心地のいい雰囲気。それでも、受け入れはしない。彼女のいる世界が、自分にとっては一番幸せで、大切な世界。楽しい雰囲気に流されても、その気持ちは絶対に忘れない。

 王としての決意表明をしたその瞬間。明日花は心の中で、元の世界へと帰還する決意も同時に表明していた。誰に届かずとも、自分の中での確固たる決意である。


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