世界の果てのその向こう

―終章―

第四話 幼馴染みの少女たち


 翌朝、サクヤさんが一人で宿に迎えにきた。リリィロットさんは家で待っているそうで、俺たちはその日に宿を出ることになった。

 ヒナタとヒヨリはリリィロットさんの家に、俺とサクヤさんは彼女の泊まっている宿へと向かう。神の柱の側にある宿。三階建ての大きな宿で、一階、二階は二部屋、三階は一部屋だけという高級宿で、普通の旅人が泊まることはほとんどないという。

 サクヤさんはこの宿の三階に泊まっている。この街に来てから三年ほど、長期滞在しているそうなので、現在は彼女専用の宿のようになっている。

「あなたにはこの部屋に泊まってもらいます」

 案内された三階の部屋はとても広く、リリィロットさんの家の二倍はあるだろうか。ベッドルームも複数あり、二人泊まるだけの広さは十分にある。

「ここって、いくらするんですか?」

「あなた方の泊まっていた宿の十倍です。あなたが払うのはその半分ですよ」

「お金は?」

「足りないなら自分で稼いでください」

 質問にすらすらと答えるサクヤさん。リリィロットさんに、五年は暮らせると言われたけれど、十倍となれば半年しか暮らせない。もっとも、解決にそこまで長い期間がかかることはないと思うけれど、今後の旅の資金を考えると心許ない。

「ご安心くださいな。もちろん、稼ぎ方はこれから教えますよ。あなたの能力、実力からすれば、一日で数年分の宿代を稼ぐことだって可能なのです。今後の旅のことを考えても、知っておいた方がよろしいのではなくて?」

「ありがとうございます。サクヤさん」

「長期化の可能性もありますし、必要だから教えるまでです。感謝は不要ですよ。……それより、あなた」

 サクヤさんはきっとして俺を睨みつける。鋭い視線に射抜かれて、どうすればいいのか迷ってしまう。

「その話し方と呼び方、気に入りませんね。初めて出会ったときのように、自然に話しなさいな。それから、私のことはサクヤで。いいですね?」

「……わかったよ、サクヤ」

 お願いではない命令に、俺は少し驚きつつも、素直に承諾する。実際、その方が気楽だから俺としてもありがたい。

「では、外に出ますよ。怪物退治がてら、稼ぎ方も教えます。今ならちょうど、西にあれが来ているはずです」

 あれ、というのが何かは気になったけど、聞いても話してくれないだろうから、俺は黙って彼女の後についていくことにした。

 やってきたのは、街から西に少し離れた草原。修行場所は東側だったから、こちらへ来るのは初めてだ。何の変哲もない草原の先には、広い海と小さな港町の影が見える。この街が西に広がって発展しているのは、あの町との盛んな交易が大きな要因としてある。

 港街として発展しなかったのは、ここに神の柱があったからだ。神寄人の住む森林があったことも大きい。神の柱を中心に街が作られていき、時代とともに航海技術が発達。怪物との遭遇が少ない航海ルートも発見された。海を介しての交易が盛んになったことで、あちらにも人が集まるようになり、街も西に広がっていったのだという。

「空を見てください」

 言われて、俺は空を見上げる。そこには大きな岩が浮かんでいた。広場の数倍くらいはあろうかという岩がふよふよと空を漂っている。雲よりは低いけれど、街にあるどの建物――一番高いのは宿と同じ三階建てだ――よりも高い位置にそれはあった。小さな山の山頂付近だけが切り離されて、浮いているかのよう。

「あれは浮遊岩。浮遊銀の鉱石が多くとれるのです。この世界に住まう普通の人は、自然と落ちてくるのを拾うことしかできませんが……私たちなら話は別です」

「自然にって、どうやって?」

 この世界での浮遊銀の価値を考えると、あれごと落ちてくるわけではないはずだ。俺の疑問に、サクヤは予想していたとばかりに即答する。

「他の浮遊岩と接触したときに砕けた欠片や、また別の理由で砕けた欠片が落ちてきます。その理由については、直接見た方が早いでしょう」

 空間を凝結させて空中に飛びあがる彼女についていく。程なくして、俺たちは浮遊岩の上に立つことができた。

 岩石が剥き出しで凸凹してはいるけれど、視界は開けている。中央付近を見ると、三体の怪物が戦っているのが見えた。一体の熊のような怪物に、二体の鮫のような怪物が襲いかかっている。

「見ての通りです。あの争いで砕けた岩石が地上に落ちるのです」

「怪物同士がどうして?」

「この浮遊岩を構成する岩石や、自生する植物などは怪物にとっての餌。力の源となる成分が多く含まれているのです。それを奪い合っているのですよ」

 熊は両手に剣を握っていて、背中にはチャックがついている。その熊に対し、鮫は空を海のように飛び回りながら襲いかかっている。

「初めて見るな」

「でしょうね。ですが、文献では見たことがあるのでは?」

「ん、それなら。縫い熊(ぬいぐま)に飛鮫(トビザメ)ってやつにそっくりだよ。サクヤも知ってるのか?」

「上で読んだわけではありませんが、リリィロットの家で読んだことがあります。歴代の神寄人が、上から落ちてきた人の持っていた本を、暇つぶしと研究目的で写本したものが何冊もあるのですよ。ちなみに、この世界ではラクラッドにグレアスと呼ばれています」

 二体の鮫――グレアスに襲われる熊――ラクラッドは翻弄されているようで、しっかり攻撃を見切っている。剣でいなしつつ、グレアスの体力が切れるか、隙が生まれるのを待っているのだろう。

 二体のグレアスが同時に突進してきたところで、ラクラッドは背中のチャックに手を伸ばして、背から大きな斧を取り出した。縫い熊のチャックの中には多くの武器が仕舞われていて、自在に使い分ける。本で見た通りだ。

 大振りの一撃でグレアスをまとめて蹴散らし、ラクラッドは大きな咆哮をあげた。

「さて、行きますよ。普段であれば、このまま浮遊岩の上に留まりますが、今は……」

「街まで出て来る可能性がある、か」

 俺たちが駆け出すと、ラクラッドはすぐにこちらに気付いて、交戦態勢を整えた。斧をしまい、再び二刀の剣を取り出して迎え撃とうとする。けれど、俺たちはグレアスとは違う。

 柄を握ったまま接近して、いつでも一撃を放てるようにする。一人なら苦戦するかもしれないけど、サクヤと一緒ならおそらく、決着はすぐだ。

「王手、です」

 言葉とともに、凝結された空間が網となってラクラッドを包み込む。

「はあっ!」

 身動きがとれなくなったラクラッドが、網を振りほどくよりも早く抜刀。居合い一閃。

 ラクラッドは体力も多いらしく、一撃では倒しきれないが動きは大きく鈍っている。そこにサクヤが近づいて、大きく振り上げた杖を一気に振り下ろした。

 再びの咆哮は、断末魔の悲鳴。ラクラッドの体は砂のように溶けて消えていった。

「では、浮遊銀の採掘をしましょうか」

「了解」

 それぞれの場所で浮遊銀を採掘する。俺は近くの岩を囲うように、薄く空間を凝結させる。そこに居合いの一撃。薄い空間が崩れるとともに、岩に衝撃が響き、浮遊銀を含む鉱石だけが崩れ落ちてくる。両親に教わった採掘法だ。

「なるほど。そういう方法もあるのですね」

 サクヤは装飾杖で岩を叩いて、浮遊銀を採掘している。杖についている装飾は武器としてだけでなく、採掘にもある程度は使えるようだ。

「これくらいでいいかな?」

「ええ、十分でしょう」

 採掘が完了して、俺たちは集めた鉱石を持ち寄った。採掘にかかる時間は短かったけれど、これを使いやすいサイズに砕くのには多少の時間が必要だ。持ち運び用の袋に入れて、続きは宿に戻ってから。大雑把で構わないなら、一日あれば十分だろう。

 サクヤの目の前には、俺が採掘したものの倍くらいの浮遊銀が置いてあった。俺が取った量は、最初に持っていた浮遊銀の三倍ほど。その倍となると、かなりの量である。

「凄いな」

「慣れていますから」

「いや、それもあるけどさ」

 俺と同じ時間でこれだけの量を採掘したのも確かに凄い。けれど、驚いたのはその量そのものだ。この世界での浮遊銀の価値を考えると、そこまで稼ぐ必要があるとは思えない。

「神として暮らしていると、色々と入り用なのですよ」

「そうか。神として、ね」

「ええ。では戻りましょうか」

 深くは追求せず、俺たちは宿に戻って簡単な加工を済ませておいた。

 翌日は街の中や、街の周囲を見て回って怪物の気配を探る。午前中だけで、今日は怪物は出なさそうだとわかったので、午後は自由行動ということになった。サクヤは街を出てどこかへ出かけるというので、俺は街の中をぶらぶらと歩いてみることにした。

 暗くなる頃、サクヤが帰ってきた。あっちは森林、リリィロットさんの家がある方向だ。それ以外に目立つものはない。

「リリィロットさんに会いにいってたのか?」

「そ、そんなわけないじゃないですか! 戻りますよ!」

 声をかけると、明らかに動揺した様子のサクヤ。そこでふと、俺はひとつの言葉を口にして見ることにした。

「そういえば、浮遊銀の……」

「な、なんですか?」

「加工が得意な職人はこの街にいるのかなって。その杖の装飾、凄いからさ」

「……ああ。これでしたら、私が自分で加工したのです。リリィロットにも少なからず、協力してもらいましたけれどね」

「凄いんだね」

 俺は軽く答えて、早足で歩くサクヤを追いかけて宿に戻った。この慌てよう、そろそろ尋ねてもいい頃ではないだろうか。

 その日の夜、俺はサクヤの部屋を訪れた。大きなベッドのある部屋で、サクヤは寝るときに限らず、いつもここにいることが多い。一番広い居間のような部屋は、ほとんど使っていないようだ。ちなみに、俺はそこから離れた小さめな――といっても前に泊まっていた宿のものに比べると倍はある――ベッドのある部屋に寝泊まりしている。

「何か?」

「話があるんだけど、いいかな?」

 俺の姿に気付いたサクヤが用件を尋ねる。部屋といっても宿の一室ということもあってか、仕切りとなる扉は少ない。風呂やトイレへ繋がる扉があるくらいだ。

 出してくれた椅子に腰掛けて、俺は単刀直入に尋ねる。回りくどいことはしない。

「サクヤはリリィロットさんのことが好きなんだね」

 沈黙とともに、ぼんやりと俺を見つめるサクヤ。

「……な、ななな、なにを馬鹿なことを言って!」

 けれど、すぐに顔は真っ赤に染まり、彼女は慌てて弁明を始めた。

「そ、そんなこと、あるわけがないでしょう! そ、それはその、彼女のことは大事に思ってはいますけど、そんな、好きなどと……恋愛感情など……」

 予想はしていたけれど、予想とは違った反応が返ってきて俺は驚いていた。

「いや、俺はそのつもりで聞いたんだけど」

 再び沈黙が部屋を包む。その沈黙を破ったのは、サクヤの怒りに震えた声。

「かまをかけるとは、いい度胸ですね……」

「完全に自滅だと思う」

「黙りなさい!」

 聞く耳は持っていないようだ。回りくどく聞いておけばよかったのかもしれないけれど、航海してももう遅い。それより今は、この状況をどうにかすることを考えよう。

「これは、口封じをしなければなりませんね。ふふ、彼女には言えないようなことをして、話せないようにしてあげます。リリィロットには悪いですけれど、このくらいなら許してもらえるでしょう」

「彼女?」

「ヒナタさんのことですよ」

「いや、俺とヒナタはそういう関係じゃ」

「そうなのですか?」

 一応、落ち着いて話すくらいの冷静さはあるようだ。というより、これからやろうとしていることへの躊躇が、その落ち着きを生み出していると言ったところか。

「あのときに守ろうとした姿から、そうに違いないと見ていましたが……ヒヨリさんの方でしたか」

「それも違う」

 俺が否定すると、サクヤは少し沈黙してから、冷たい声で呟いた。

「体だけ、と」

「落ち着いてください」

 話はできるけれど、思考は冷静ではないと見える。しばらくそのような問答を繰り返していると、やっと落ち着きを取り戻したのかサクヤは納得してくれた。

「なるほど。告白されはしたけれど、答えはまだなのですね。そして、私が自滅したことも認めましょう」

「わかってくれて良かったよ」

「ええ。では、色々と白状してさしあげます。私の気持ちに関しては他言無用、特にリリィロットには絶対に黙っていること。破ったら、覚悟ができているとみなしますよ」

「もちろん。誰にも言わないよ」

 俺が約束すると、サクヤは全てを語り始めた。

「まずは、私の一家が落ちてきた日のことから話しましょうか」

 淡々とした口調で。長い話になりそうだけど、尋ねた時点で聞く準備はできている。

「私たちの一家が落ちてきたのは、十二年前。私がまだ六歳の頃でした。父と母、そして私の三人で旅する中、世界の果てに近づいたところで地が揺れ、私たちは落ちていきました。幸いにも、両親が咄嗟に行った空間凝結のおかげで、私は怪我ひとつなく助かりました。両親は私を守るために怪我をしましたが、命に別条はなく、半月もあれば完治する程度の怪我で済みました。

 私たち一家は神寄人の家で休息をとりました。先代の神寄人からこの世界についての話を伺い、リリィロットとも出会いました。歳の近い彼女と仲良くなるのに、時間はかかりませんでした。

 両親の怪我が癒えた頃、二人は旅に出たいと先代の神寄人に言いました。しかし、今の時期は怪物の危険が高いからと、彼女は許しませんでした。その理由については、既に聞いた通りです。旅立ちは私も止めました。リリィロットともっと一緒に遊びたい、話したいというのが主でしたが、それにより両親も一旦は旅立ちを諦めたのです。

 しかし一月後、再び両親は旅立ちを希望しました。家の近くで出会った怪物を、何度も無傷で倒したことにより自信をつけたようなのです。戦闘技術の低い二人でも、怪物など空間凝結が使えれば倒せると、勘違いしたのです。

 倒した怪物はプニマ。空間凝結が使えなくとも倒せるような、弱い怪物です。先代の神寄人はあの程度の怪物は倒せて当然、遠くにはもっと強い怪物がいると、必死に止めていました。それでも両親は旅立ちを諦めなかったのです。臆病になりすぎているだけだと。リリィロットの遊び相手がいなくなると自分が困るから、止めているだけだと。彼女が引き取られてから二年、幼い私の目にも、リリィロットが先代の神寄人を慕い、彼女もリリィロットに深い愛情を注いでいるのがはっきりとわかったというのにです。

 ともかく、そう考えた――決め付けた両親は、私を残せば旅に出てもいいのではないかと説得しようとしました。私も、両親と離れるのは寂しかったのですが、リリィロットと一緒にいられるならと反対はしませんでした。長旅ではなく、十日ほどの短い旅の予定だったということも理由のひとつです。広い世界、まずは様子見のつもりだったのでしょう。

 先代の神寄人は止めました。安全を期するなら、半年は待つべきだと。両親もその場では理解を示しましたが、その場しのぎの嘘でした。その日の夜、目を盗んでこっそりと旅に出たのです。私にすぐに帰ってくるという、書き置き一つを残して。

 先代の神寄人にそれを見せると、彼女は諦めたように無事を祈っていました。当然です。彼女には戦う力がありません。捜索に出たところで、怪物からは逃げるしかないのです。

 両親は書き置きの通り、すぐに帰ってきました。その日の昼、私とリリィロットは家の近くから、ちょっと遠くまで遊びに出かけたのです。もちろん、怪物の危険もありますし、子供の足での遠くなどたかが知れています。

 そこで私たちは、両親の姿を見つけました。刀や槍、様々な武器で傷つけられ、絶命した両親の姿を。傷が背中に集中していたことから、おそらくもっと遠くで怪物に出会い、どうにか逃げようとしたものの、逃げ切れなかったのでしょう。足跡を見ると、家まで逃げようと思って踏み止まったのもわかりましたが、あの傷では真っ直ぐ家を目指していたとしても、結果は変わらなかったでしょうね。

 私たちは先代の神寄人に伝え、私の両親の亡骸は洞窟に運ばれました。洞窟のことは知っていますか? ――そうですか。なら省略しても問題ないですね。

 それから私は修行に励みました。両親を殺した怪物を倒すため。怪物の危険からリリィロットを守るための力を求めて。傷跡から、ラクラッドであることはわかりました。リリィロットも色々と手伝ってくれました。私が十一歳、彼女が十歳の頃、先代の神寄人が亡くなったときも、悲しむ素振りも見せないようにして。きっと、私のことを想ってくれたのでしょうね。

 そして十五歳になった頃には、私も強くなり、ラクラッドを片手でひねり潰せるほどになりました。それから私は街に出ました。神の力を扱う者――神として街に住もうと。

 もちろん、リリィロットへの助けは惜しみません。森林周辺の危険な怪物は早期に退治し、幼い頃から苦労して取っていた浮遊銀も集めてこっそり置いています。あなたはもう気付いているでしょうけれど、昨日の稼ぎの半分は彼女のためです」

 サクヤは話を終えると、大きく息をついた。

「君は自分が神ではないって、わかってるんだね」

 肝心なことについては、はっきりと口にしなかったけど、彼女とリリィロットは幼馴染みのような関係であることは理解できた。そして彼女の気持ち、考えもある程度は推測できたけれど、自信がないので直接尋ねる。

「当たり前です。その辺の怪物にあっさり殺されるような神など、いるものですか。私が神を名乗るのは、その……」

 目を逸らすサクヤ。ここからは言わない方がいいのかもしれないけど、念のためだ。確認はちゃんとしておいた方がいい。

「リリィロットの気を引くため?」

「……わかっているなら言わないでくださいな」

 回りくどいことをするなあと思ったけれど、さすがにこれは言わないでおく。短い付き合いでも、彼女の素直になれない性格は理解したつもりだ。

「サクヤが彼女のことを好きになったきっかけって?」

「さあ、なんでしょうね。気がついたらなっていた、としか言えませんね。しかし、私に恋愛相談をしようなどと、期待に応えることはできないと思いますよ」

「そう言われても、俺に相談できるのはサクヤだけだからね。ヒヨリに相談しても警戒されるだけだし、リリィロットさんに相談なんて、君が許してくれないだろ?」

「聞くまでもないことを聞いてどうするのです? 相談と言えば二人きりになるもの。そんなもの、許すわけがないでしょう」

 俺は肩をすくめてみせる。ヒナタへの気持ちはまだぼんやりしているけれど、離れたことで彼女のことを考える時間が増えたのは事実だ。好きな人とずっと離れている彼女に聞けば、少しは気持ちに整理がつくのだろうか。

「そうですね。とりあえず、もっといい男になることに力を入れてはいかがです? そうなればヒヨリさんの問題は解決するでしょう。もっとも、今はそんなことよりも、怪物への対処を優先してもらいたいところですけれどね」

 俺は大きく頷いて答えた。この問題を解決しないと、自由に旅に出ることも叶わない。今はそれだけに集中することにしよう。


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