二人の女の子が放課後の帰り道を歩いている。二人とも村立私立学校の高等部に通う一年生で、小中高の一貫教育であるから進学直後でもよく慣れた道である。
ほんの少し背が高い少女は色倉灯〈しきくら あかり〉、並んで歩いて隣をほんの少し見上げる少女は大岩成〈おおいわ なる〉。幼馴染みでなかよしの二人が、こうしていっしょに帰る光景は、二人を知る村の人なら誰もが知るものである。
「ところで、灯はあの店にいった?」
柔らかな髪を揺らして、成が新たな話題を口にする。
「噂の『ン・ロゥズ』だね。成ちゃんはいったの?」
さらさらの髪はそよ風を受けて、灯が会話を続ける。
「ううん、私は近くに寄って見ただけ。窓から中も見たけど、普通の喫茶店みたいね」
「ピッツァカフェって書いてるんだよね。私は土曜日の朝にいこうと思ってるんだけど、成ちゃんもいっしょにいく?」
「朝からピッツァも魅力的ね。灯の誘いは断りたくないけど、断るわ。その日はやることがあるの」
「そっか。美味しかったらまた今度ね。成ちゃんは何をしてるの?」
「そうね……。大したことじゃないけれど、少し下半身を鍛えて――」
二人の会話はまだまだ続く。話題を一つ、二つと変えて。それもとても魅力的な会話ではあるが、残念ながらこれから始まる物語にはそれほど関係はない。今はここまでにしておこう。